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うつ:やる気が起こらない
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アメリカでは3000万人、つまり全人口の10パーセント以上が慢性的なうつか、それに関係したなんらかの気分障害に悩まされている。
ここには不特定多数の更年期の女性と、600万人ほどの65歳を超えた人たちも含まれる。
だが、これはおそらく控えめに見積もった数字だろう。
わたしたちの多くが、
自分がうつ状態であることに気づかずにいたり、
恥ずかしくて認められなかったり、
助けを得るには齢をとりすぎていると思いこんだりしているからだ。
うつは治療によってその70〜90パーセントまでが改善するという事実があるだけに、なおさら悲劇的な状況である。
しかしこれだけは言える。
うつ(正常な生活をさまたげるほどの圧倒的な悲しみと絶望の感情が持続する状態)は齢をとれば避けられないというものではない。
加齢の生化学あるいは生物学にうつの原因となるものは存在しないのだ。
高齢者の多くには、うつになるだけの十分な理由がある。
配偶者や親しい友人、近親者を失い、ふいにおのれ自身の死という運命を痛感させられるかもしれない。
自分の死期が近づいているという事実を思いわずらい、いつそれがやってくるだろうかと考える。
死を思う以外にも、悲しみや憂うつを覚える理由はいくらもある。
65歳にもなると、まだまだ元気で働く意欲があり、お金も使えるにもかかわらず、引退を迫られることも多いのだ。
だれもあなたを雇ってはくれない。
いまや活発で生産的な人生から、引退した「お年寄り」への過渡期に直面する。
もしもそこそこの蓄えと趣味があるなら、しばらくすれば順応できるだろう。
だが安定収入のない高齢者では、ずっと慣れ親しんできた生活水準を維持できない場合が多い。
それでもわが家で、配偶者や家族といっしょに暮らしていれば、そのショックもいくぶんかはやわらげられる。
しかしだれも頼る相手がおらず、体の衰えや痴呆、慢性病のために病院や養護施設に閉じこめられたままの高齢者は何百万人もいる。
その少なくとも半分は深刻なうつ状態にある。責めることができるだろうか?
こうした状況があって、天秤の針をうつのほうに傾けるのは、苦痛であるか命にかかわる(もしくはその両方の)病気、あるいは高齢者の自立を奪うような病気の発病だ。
耳がよく聞こえない。
目がはっきり見えない。
ものを覚えられない。
心臓発作におそわれた。
関節が曲がらない。
セックスは昔の記憶でしかない。
小用が足せない。
脳卒中のあと体に麻痔が残り、話すことも、介助なしに動きまわることもできない。
こうした人たちが落ちこむことは容易に想像がつくだろう。
けれども、不運にたいする当然の悲しみと、治療を要するうつとのあいだには違いがある。
大半の人たちは齢がいくつだろうと、逆境に直面しても順応し、役割をはたしつづける。
もちろん折りにふれて悲しい気持ちにはなる。
それは正常なことだ。
でもやがては「立ち直り」、がんばって生きていく。
重要なのはそうするための力だ。
カテゴリー:うつ
うつの症状:ひきこもり、疲労、絶望感
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本書では、うつに陥りやすい現代人の食事の問題点や、心に効く食べ方を解説する。
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うつの幅は非常に大きい。
一方の端に位置するのは、個人的な悲劇によってひきおこされる限定された悲しみ。
もう一方の端は、しばしばはっきりした理由をもたない、長期にわたる憂うつだ。
残念なことに医師や当人の家族たちは、かならずしもこの両極のあいだの違いを理解しているとはいえない。
ある人のうつが治療を要するかどうかは、それがどの程度重く、当人を無力にするかによる。
その症状に厳密に定まった定義はない。
うつになる明白な理由があり、症状が数週間かそれ以上つづく場合は、軽い抗うつ剤がしばしば役に立つ。
2ヶ月以上もずっとうつのままだったり、うつ状態が断続的にやってきたりする場合は、無期限の治療が必要になるかもしれない。
高齢者のうつはふつう、ひきこもりや無関心、つまり、なににもだれにたいしても興味がないという態度にあらわれる(若い人はもっと興奮したり落ちつきをなくしたり、不安がったりする傾向がある)。
高齢者の場合に注意して見るべき症状はつぎのようなものだ。
・悲しみや不安の持続。
・注意の集中や決断の困難。
なにを着るか、なにを買うかといった決断を下すことがむずかしくなる。
本などを読んだり、人と話したり、テレビを見たりしているうちに、思考がとりとめの ない方向へそれていく。
なにか訊かれても、答えようとしないか、
あるいは「ほっといて」とか「わからない」などと答える。
・それまで楽しんでいた活動への興味を失う。趣味や家庭を顧みなくなる。
・ずっと強い性衝動があったのに、セックスに興味がなくなる。
・しばしばはっきりした理由もなく、ひんぱんに泣く。
・睡眠パターンに変化が起こる、不眠症、もしくは過度の眠気。
・絶望感や罪の意識を感じ、自分が無価値だと思う。
遠い過去の、ほかのみんながとっくに忘れてしまった出来事を、罰せられるべき悪行として思い出す。
こうした贖罪の感情は、死期が迫っているという予感や、若いころ犯した罪(現実のものであれ想像上のものであれ)の報いがこの先あるのではないかという気持ちから生じるものかもしれない。
・仕事場や家庭での役割をうまくはたせない。
・うつ状態のうえに、耳がよく聞こえず目もよく見えない人は、偏執的になり、被害妄想に悩まされたり、自分をおとしいれようとする陰謀があるなどと思いこむ。
・慢性的な疲労、もしくは活力の欠如。
・原因のよくわからない痛み、とくに頭痛や、便秘、体重の減少。
・食欲の変化。空腹感がない、もしくはむやみに食べる。
・死や自殺をめぐる考えにとらわれる。
・もの忘れ。
中年になった人の多くはときどき名前や言葉を忘れてしまい、
「おや、わたしはどうしてこの部屋に来たんだろう?」
などと言ったりするが、こうした記憶力の衰えは高齢者にはさらにひんぱんに見られ、より激しい反応をひきおこす。
うつの兆候はかならずしも、ここにあげたような一般的なものにはかぎらない。
まわりが敏感に感じとらなくてはならないこともある。
高齢者が大事にしていた持ち物を急に手放そうとするのは、しばしばうつの兆候であり、絶望感や、もう未来はないという思いこみを示すものである。
カテゴリー:うつ
うつと間違えやすい病気
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うつの最も典型的な症例が、じつはほかの病気を反映していたということもある。
うつを含む感情障害もしくは精神障害と診断された人の40〜50パーセントが、じつは気づかないうちに身体的な不調をかかえていたとわかるのだ。
高齢者にどんな諸症状が見られても、うつのあらわれだと決めてかかってはいけない。
そのせいで治療できる病気がほうっておかれるおそれがある。
はっきりした理由があろうとなかろうと、うつ状態にある人には、有資格の専門家による精神状態の診察のみならず、徹底した医学的評価もおこなわれるべきだ。
以下にあげるのは、うつと誤解されるおそれのある疾患の例である。
パーキンソン病患者のおよそ40パーセントは、同時に重いうつもかかえている。
もしもこの病気をあらわす震えやその他の兆候(こわばった表情、前かがみの姿勢、ゆっくりした動作、静かで単調な声)がなければ、うつだと誤解されかねない。
もちろんパーキンソン病患者の多くはうつ状態にもあり、その場合は両方の病気の治療が必要になる。
脳卒中というと、主としてあとに残る麻痔ばかり心配しがちだが、脳卒中におそわれた人の30パーセント以上はうつになる。
右ききの人の脳の左側が傷つき、体の右側が弱ったり麻痔したりする場合に、とくに起こりやすい(左ききの人の脳の右側が傷ついたときもおなじである)。
がん患者の40パーセントがうつ状態になる。
がん患者の多くは、必要なはかの薬といっしょに抗うつ剤も処方されれば、自分の病気にうまく対処していくことができる。
甲状腺機能低下症は、心身の働きの鈍化、記憶力の低下、無感動な態度、疲労、便秘など、うつと誤解されやすい症状をひきおこす。
正しい診断を下すために必要なのは、疑いをもつ基準を高くすること、そしてかんたんな血液検査だけだ。
自己免疫系に関係するリウマチ性多発筋痛および側頭動脈炎は、高齢者にはよく見られ、根深い疲労感、頭痛、理由のわからない食欲の減退など、すべてうつの特徴でもある諸症状をひきおこしうる。
どちらの病気もステロイド治療によって治すことができる(側頭動脈炎は治療せずにおくと、視力の低下や脳卒中につながることもある)。
アルツハイマー病患者の半数もやはりうつ状態にある。
患者が急に食べなくなったり、ほかの症状が悪化したりしたときに、その可能性を考える。
こういう場合には抗うつ剤によって、アルツハイマー病の容赦ない進行と見られるものが回復することがある。
多様な薬物が、おたがいにまずい具合に影響しあい、うつをひきおこす場合があるので、診断が疑わしく思えたときにはかならず、自分の飲んでいる薬を(医師に処方されたものでも、自分で薬局や健康食品の店で買ったものでも)よく調べること。数種の薬を摂取している高齢者にはとくにあてはまることだ。
貧血になると疲れやすく、活力が足りないときにはうつのように見えることがある。
酒量が増えると、あるいは飲酒をやめると、いつも眠くなったりけんか早くなったりし、
その気分の揺れはうつと誤解されやすい。以下の一般的に使われている薬は、うつをひきおこす可能性がある。
降圧剤。上昇した血圧を下げるのにひろく処方されているのは、ベータ遮断薬である。
高血圧の治療にさいして、とくに60歳以上の患者には、ベータ遮断薬を最初から使うべきではない。
たとえうつをひきおこすとしても、効果的な代替療法がないために、使いつづけるしかないのだ。こうした場合には抗うつ剤を併用する。
これはほかの治療法が利用できないせいで、副作用があると知られている薬物を妥協して使わざるをえないという、まれな実例だ。
鎮痛剤および睡眠剤は、単独もしくは組み合わせで使われると、高齢者にうつをひきおこす原因として悪名高い。
カテゴリー:うつ
うつの治療法
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周囲の愛情や支えに恵まれながら、それでもうつが治らず、治療が必要なときには、数多い抗うつ剤のなかから選ぶことができる。
いくつかの研究では、薬物治療と精神療法を組み合わせるほうが、どちらかを単独でおこなうよりも効果的であるという結果が出ている。
処方箋による抗うつ剤に頼る前に、わたしはまずセイヨウオトギリをすすめる。

これは天然の薬草で、深刻な副作用もない(もっとも太陽が大好きで、しょっちゅう有害な紫外線を体に浴びている人は、セイヨウオトギリを摂取すると発疹ができるおそれがある)。
ヨーロッパでは効き目の穏やかな抗うつ薬としてひろく使われており、その効果は現在、国立衛生研究所で評価が進められているところだ。
通常の摂取量は1日00ミリグラムで、効果があらわれるには4週間かかる。
精神的な支えがあり、ほかの基礎疾患による症状を抑制し、さらにセイヨウオトギリを試したうえで、それでもうつが弱まらずにつづくようであれば、はじめて強力な抗うつ剤を処方してもよいだろう。
だがその前に、徹底した健康診断をおこない、とくに患者の腎臓と肝臓がちゃんと働いているかに注意を払う。
抗うつ剤の多くはこの2つの臓器によって排出もしくは処理されるので、その機能が弱まっていると、抗うつ剤によってさらに傷つくおそれがある。
すると有毒なレベルの薬物が体内に蓄積する。
だからどんな抗うつ剤であっても使用する前には、医師がかならず、患者が摂取している薬のひとつひとつを知らなくてはならない。
こうした薬物はたがいに影響しあい、その効果を減じたり毒性を発揮したりするからだ。
比較的穏やかなセイヨウオトギリでも、ほかの抗うつ剤と併用するべきではない。
抗うつ剤にはいくつかのタイプがある。
古いタイプのものは、まだいくつかの例では役に立つけれども、高齢者には新しいタイプのもののほうがより耐えやすい。
この新しい薬とは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、最もよく知られているのは「プロザック」、「パキシル」、「ゾロフト」(それぞれフルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン)である。
高齢者にたいしては、処方箋による抗うつ剤のなかでも、これらを最重視して使うべきだろう。
セロトニンは、気分に影響をおよぼす脳内化学物質で、うつ状態の人ではこれが減っていることが多いのだが、SSRIはその活動を長くひきのばすことによって効果をもたらす。
最も多い副作用は胃腸からくる吐き気、下痢、食欲の減退などだ。
また、緊張、不安、震え、めまい、不眠、性的機能の低下、口の乾き、頭痛、眠気、体重減、インフルエンザに似た症状、疲労といったものもある。
このリストに恐れをなしてはいけない。
こうした問題はそうしばしば起こるものではないし、薬をやめれば消えてしまう。
プロザックはたぶん最も有名だろうが、これは半減期が長い(つまり体外に排出されるのに数日かかる)ので、実際になにか厄介な副作用があったときには、体から出ていくまでやり過ごすのに苦労することになる。
うつにかかった高齢の患者にたいして最初に投与するプロザックの量は、ふつう一日に5〜10ミリグラムで、少なくとも一週間はそのままの量をつづけてから増やしたほうがいい。
プロザックよりも好きなのはパキシルやゾロフトで、これらの半減期はほんの一日かそこらである。
だが、パキシルを摂取していると眠くなることがあるので、車は運転しないように。
ゾロフトは抗凝血剤のワルファリン(「クマジン」)の効果をさまたげるおそれがある。
もっともこの2種類の薬をいっしょに摂取できないということではない。
よりひんぱんに血液検査をうけて、血の固まる能力が高くなりすぎたり低くなりすぎたりしないように気をつける必要があるだけだ。
またSSRIはすべて、性衝動を減退させ、絶頂感をさまたげる。
あなたがSSRIを投与されるとき、もしも血圧を下げる薬か、リチウム(躁うつ病の薬)か、
あるいはデキストロメトルファン(市販のせきどめ薬に多い成分)を飲んでいたとしたら、かならず医師に伝えること。
こうした薬物はSSRIと好ましくない影響をおよぼしあう。
カテゴリー:うつ


